2018/4/6更新
当研究会は、「国際観光コンベンションフォーラム2018in長崎」(事務局:札幌国際プラザ、コンベンション札幌ネットワーク)を、去る2月14日、15日の両日、長崎県長崎市にある長崎ブリックホールで開催しました。
「未来の出島−MICEで交流のまちづくり」をテーマに、今回で11回目となった国際観光コンベンションフォーラムも、日本全国より、観光・MICE分野等の研究者、自治体、観光協会、コンベンションビューロー、PCO、イベント会社、施設などMICE関連企業・団体から140名の皆様にご参加いただきました。2日間のプログラムで特別講演、基調講演、分科会、意見交換会、パネルディスカッション、エクスカーション、MICEサロン・ミーティングを実施しました。
MICEをビジネスチャンスにするにはどうすべきか、国際競争にどう立ち向かうか、まちの交流産業化への挑戦、90万人超に発展した集客イベント「長崎ランタンフェスティバル」、都市の再生とMICE施設の整備活用、ユニークベニューの活用、MICEにまつわる地域連携など、多岐に渡り活発に議論する場となりました。 また本年も、プログラム講演後のオプションにも大きな関心が寄せられ、エクスカーション&MICEサロン・ミーティングには過去最高となる73名が参加。自分たちの地域ごとの課題・事例紹介などを活発に議論される姿が見られました。
はじまりの基調講演Tでは、「長崎の冬を彩る大イベントに成長した“長崎ランタンフェスティバル”」をテーマに、同ランタンフェスティバル企画幹事会相談役で、観光カリスマ(観光庁)/長崎県観光マイスターの林 敏幸氏にご登壇いただきました。
それまで毎年長崎新地中華街で行われていた中国の「春節祭」を発展させた形で、1994年に初めて、「長崎ランタンフェスティバル」が開催されるまでの秘話、ランタンの装飾輸入からカタログのレイアウトまで手作り、まさにボランティアで進めていったこと、同フェスティバルの発展に伴い、街が活気付いていったことなど、今や90万人を超える集客の大イベントへと導かれた、これまでの取り組みについてお話いただきました。 講演翌々日からの開催となった同ランタンフェスティバルは、フォーラム2日目の15日よりライトアップが行われており、講演を聴いて、本番ともにご覧になられた方も多かったのではないでしょうか。
基調講演Uでは、観光庁 MICE推進室長(参事官)の井上 学氏より、「日本MICEは国際競争にどう立ち向かうか」と題して講演いただきました。
現在、MICEの経済効果は、一般観光での消費額に比べ、おおまかに倍の経済効果があること。MICE資源の開発で、何故ユニークベニューがMICEで必要なのかというと、交流の場・一体感の創出・exclusiveな驚きを生み出すことができるからであり、「普段入れないところに入りたい」というニーズに応える為であり、そうした資源を見つけ磨いていく商品開発をすべきであること。官民でお互いの強みを持ち、MICEの施設インフラの運営などもタイアップしていくこと、ネットワークづくりには共感が重要であり、その共感をどうやって広げていくかは、「自分ごととすること」や「メリットの見える化」が大切であることなど、MICE業界で活動する私たちにとり、今後の業務遂行にあたり、重要な視点やアイディアを様々ご紹介いただきました。
続いての2つの分科会は非常に多数のご参加を賜り、全体を見渡すラウンド・テーブルミーティング形式からレイアウトを変更し、スクール形式で行いました。
現在、全国で新設や建設計画などMICE施設のラッシュが始まる中、MICE施設整備は都市再生の大きな柱となります。第1分科会では、MICE施設以外も含めた空間の利活用、機能やその役割など、今後の「都市のあり方」について議論しました。東京都市大学都市生活学部教授の坂井 文氏がコーディネーターを、スピーカーに仙台国際センター センター長である伊藤 均氏を迎え、会場からも地域の事例が複数挙がり、活発な意見交換が行われました。
第2分科会では、「ユニークベニュー活用講座」をテーマに、コーディネーターとして長崎文献社副編集長の川良 真理氏、スピーカーには内閣府迎賓館 運営課長の井上 秀敏氏が登壇され、ユニークベニューの開発・利用促進が叫ばれている中で実際の事業展開・活用にまだ障害がある現状を踏まえ、活用事例を学びながら、今後はどう進めていくのか議論がなされました。行政、コンベンションビューロー、観光協会、MICE施設その他関連企業などから多数の参加が見られました。
初日プログラム終了後の意見交換会は、世界新三大夜景都市である長崎の夜景を一望できる稲佐山のルークプラザホテルに会場を移し、華やかに催されました。長崎名物のちゃんぽん、長崎かまぼこ、角煮まんじゅうなどの郷土料理、さらに、長崎各地からカステラや饅頭、ゼリーなど有名なお菓子コーナーも設けられ、お土産に購入して帰ろうという声が聞かれました。
会の中では、長崎を象徴する和華蘭文化、和(日本)、華(中国)、蘭(オランダ、ポルトガルなどの西洋)のそれぞれの民族衣装、服装に身を包んだ地元関係者による歓迎、そして加藤邦彦 長崎副市長による地元歓迎の御挨拶、新たに当研究会に入会された、一般社団法人水戸観光コンベンション協会様による御挨拶などをいただき、参加者も目で見て舌で味わう和やかな歓談の場となりました。踊りと音楽とともに次々と仮面を変える中国の伝統芸能・変面のアトラクション提供を受け、会場がさらに沸きました。
[2日目]2日目最初のプログラムは、ご公務でご多用の中、本フォーラム開催地、田上富久 長崎市長にご登壇いただきました。田上市長による特別講演は、「“人を呼ぶまち”から“人を呼んで栄えるまち”へ〜交流の産業化への挑戦〜」 をテーマにお話しいただきました。
人口減少が進む中、地方創生の実現に向けて、MICE の推進は長崎市にとって有効な手段です。地域の活性化に向けて、MICEをまちづくりにどう活かしていくのか、交流拠点施設の検討と併せて、長崎市が目指すべき方向性について、その取り組みをスライドとともにお話しいただきました。
続いての座談会では、細野 昌和 北海商科大学商学部 教授を進行役に迎え、太田 正隆 JTB総合研究所 主席研究員/東京国際大学国際関係学部 客員教授/慶應義塾大学大学院理工学研究科 特任教授、そして廣江 真 凸版印刷情報コミュニケーション事業本部 MICEエバンジェリストの、当日本コンベンション研究会幹事3名による座談会を行いました。今回のテーマはずばり、「日本コンベンション研究会幹事が語る―MICEをビジネスチャンスにするには」。全国の様々な事例に、参加者は興味深い様子で聴講していました。
会議終了後のエクスカーションは、ちゃんぽん、皿うどん発祥の店・四海楼にて昼食を堪能したのち、実際に長崎で現在行われているさるく(※まちをぶらぶら歩くという意味の長崎弁)体験を、地域資源・MICEコンテンツの一環として実施しました。全3コースに分かれ、日本二十六聖人殉教地 西坂公園など様々な場所を、実際にあった事実・歴史を辿り訪れました、長崎のまちの歴史と文化に精通したガイド・長崎コンプラドールによる説明に、参加者たちは真剣に耳を傾けていました。
MICEサロン・ミーティングは、特別なお取り計らいで諏訪神社内にて開催となり、最初に、神社にまつわる歴史を鎮西大社諏訪神社 権禰宜(ごんねぎ)の新名(にいな)紀夫氏より伺いました。本年は「MICE地域連携を考える」と題し、NPO法人コンベンション札幌ネットワークの松野 淑恵副理事長の進行で活発に議論が交わされました。
全国的に進む、MICEに係る民間事業者のネットワーク化、官民連携の組織化。観光庁から呼びかけを受けている、MICE誘致促進地域ネットワークの強化。
今回も数グループに分かれ、各地域の地元企業、市民、経済界など様々な立場からの声と現状を受け止め、MICEの認知度、観光業との兼ね合い、地域ごとの課題共有など、新たな可能性を模索し、それぞれの地域の状況や課題を車座で語り合い、幅広く意見交換がなされました。
いずれのグループも今後に生かせる意見、未来への展望などが数多く挙がり、参加者から好評のうちに、全2日間の日程が終了しました。
今回の大会の模様は、月刊イベントマーケティング32号(P5)にて掲載されています。(PDFファイル:3.6MB)
次回の国際観光コンベンションフォーラムは来年春、北海道・札幌市で開催する予定です。会期中、フォーラム主催事務局、主管を置く札幌が来年開催地として紹介されました。札幌での開催は、前回札幌(&小樽)大会より実に5年ぶりの開催となります。長崎に引き続き、札幌も訪れた方が新たな札幌の魅力を感じ、熱くこれからのMICEの未来を語る場となるよう、鋭意準備して皆様のご参加をお待ち申し上げます。