2020/9/8更新
新型コロナウイルス禍によって観光・MICE業界が停滞する中、当研究会では、いち早くZoomによる緊急会議「MICEフューチャー・セッション」を企画、4月9日以降の毎週木曜日に勉強会を開催。第1部では世界各地の事例を学び、第2部では関心事項を共有する場を設け、延べ13回の会議に、延べ約600名の方にご参加いただきました。
その議論の中から、コロナ禍においても日本のMICEが安全・安心に開催できることを示すためのショーケースイベントを企画。開催日はオリンピック・パラリンピック東京大会の開会式が行われるはずだった7月24日(金・祝)に決めました。聖火リレーのように全国をつなぐ「MICEフューチャー・アクション─新たな日本のMICEショーケース」への参加を、研究会メンバーが全国のコンベンション都市やMICE施設、企業に呼びかけました。
開会あいさつ
withコロナの時代の「安心・安全なMICE」を国内外にアピールしようと全国一斉に実施した、「MICEフューチャー・アクション─新たな日本のMICEショーケース」では、コロナ対策ガイドラインに基づいた、リアル会場&オンライン参加のハイブリッド型事業として全国のMICE施設、自治体、コンベンションビューロー、関連企業が連携して開催。全国14の地域・都市にご参加いただきました。
リアル会場およびオンラインで延べ2000名以上の方が本イベントにご参加されました。
全国14都市をリレーでつなぐハイブリッド方式
バックステージ(メイン会場)
メイン会場として、東京の六本木アカデミーヒルズが会場を提供。地域ごとの会場とメイン会場を繋いで実施しました。
参加都市・団体・会場一覧
地域名 | 団体名 | 実施会場 |
---|---|---|
札 幌 | (公財)札幌国際プラザ/札幌コンベンションビューロー | 札幌コンベンションセンター 札幌パークホテル(ネットワーキング) |
仙 台 | (公財)仙台観光国際協会 | 事前録画(ホテルメトロポリタン仙台) 仙台国際センター |
つくば | 筑波大学グローバルヴィレッジお茶会ボランティア | 風土庵 |
新 潟 | 株式会社アド・メディック | 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター |
東 京 | Destination Marketing Organization(DMO)六本木 | 六本木アカデミーヒルズ タワーホール |
静岡県東部 | 静岡県東部地域コンベンションビューロー | プラサヴェルデ |
名古屋 | (公財)名古屋観光コンベンションビューロー | 名古屋国際会議場 |
愛 知 | Aichi Sky Expo活性化推進機構 | 愛知県国際展示場 |
富 山 | 「新たな日本のMICEショーケースin富山」実行委員会 | 富山国際会議場 |
大 阪 | (公財)大阪観光局 | ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンター |
堺〜 大阪 | (一社)大和ブランド推進協議会 | 事前録画(ちんちん電車) |
岡 山 | (公社)おかやま観光コンベンション協会 | 岡山コンベンションセンター |
松 山 | (公財)松山観光コンベンション協会 | ホテルメルパルク松山 |
沖 縄 | (一財)沖縄観光コンベンションビューロー (沖縄MICEネットワーク事務局) | 万国津梁館 サミットホール |
【7月24日(金・祝)プログラム】
13:00 | 開会 |
呼びかけ人代表挨拶 日本コンベンション研究会 会長 石森 秀三 | |
来賓挨拶 観光庁国際観光部長 金子 知裕 | |
13:10-13:30 | 来賓挨拶(東京) 一般社団法人日本コンベンション協会(JCMA)副代表理事 武内紀子 開催地主催者挨拶 &プログラム等説明 【開催地毎に実施】 |
13:30-14:10 | 基調講演 「新しい国際会議・MICEのあり方とは」 APU立命館アジア太平洋大学 学長 出口 治明 |
14:10-14:15 | メッセージ MICEアンバサダー 山極 壽一(日本学術会議会長、京都大学総長) |
14:15-14:25 | ビデオメッセージ ・ICCA会長 James Rees(Excel London, United Kingdom) ・ICCAアジアパシフィック部会 前会長 葉 泰民(GIS Group, Taiwan) |
14:25-15:15 | パネルディスカッション「今、インバウンド・MICEの戦略的重要性を考える」 ○モデレーター 北海道大学観光学高等研究センター 客員教授 臼井冬彦 ○パネリスト ・セントラルフロリダ大学ローゼン・ホスピタリティ経営学部 テニュア付准教授 原 忠之 ・日本政府観光局(JNTO)参与/日本コングレス・コンベンションビューロー(JCCB)事務局長 小堀 守 |
15:30-16:30 | エリアシンポジウム 【開催地毎のオリジナルプログラム】 |
16:30-18:00 | 全国総括リレー (オンラインで各地を結ぶ)参加各地の動画等による報告 総括 日本コンベンション研究会 会長 石森 秀三 進行 日本コンベンション研究会 幹事長 藤田 靖 |
閉会 | |
18:30-20:00 | 交流会(一部オンラインで各地を結ぶ) |
終了 |
基調講演「新しい国際会議・MICEのあり方とは」
基調講演でAPU立命館アジア太平洋大学の出口 治明学長は、まず、「ウィズコロナ」と「アフターコロナ」の時間軸を分けて考える必要性を強調。ウィズコロナの期間中は渡航ができないため、実地開催ができないかわりに、どこよりも面白いコンテンツをオンラインで提供すること。そしてワクチンが開発されてアフターコロナ期間に移行しても、人類はいったん覚えた利便性をそうそう手放さないであろうことが、テレビのリモコンになぞらえて説明されました。一方で、実地開催の必要性について、世界最高レベルの学会であっても、気づきは講演からではなくふとした無駄話から生まれること、世界最難関のミネルヴァ大学では授業はオンラインで行われる一方で学生は全寮制で一か所に集められている例を挙げられたうえで、ハイブリッド開催によって実地開催の価値はむしろ上がっていくという考えを示されました。
ビデオメッセージ
基調講演終了後には、MICEアンバサダーである山際壽一京都大学総長および国際会議協会の理事2名からのビデオメッセージが紹介されました。
パネルディスカッション「今、インバウンド・MICEの戦略的重要性を考える」
パネルディスカッションでは、日本MICEがwithコロナの中で、何をどこまでできるかについて議論。JNTO小堀参与からは、日本は安全できちんとした国と思われている。JNTOとして業界のガイドラインなど、国内・外に向け情報発信を進めていく。また、MICEの重要性への認識が高まってきており、時期は別として日本に行きたい人は増えている。受入都市にも歓迎してもらえる空気を醸成していくことが我々の責任との発言がありました。原先生からは、感染が多いにもかかわらず、米国人の15%、4500万人は3か月以内に海外旅行に行きたいと思っている。日本は「衛生要因」が優れている。また、インバウンド観光消費は輸出産業と同じ、外貨獲得で国富が増大する。滞在日数を長くし、消費単価を上げることが大事。MICEも同じとの発言がありました。さらに、会場の観光庁平泉MICE担当参事官から、「厳しい競争環境にある日本MICEが、コロナをきっかけに発展した、その進化のスタートがこのフューチャー・アクションだったとなれば」とのコメントもありました。臼井先生は、最後に、オンサイトで会うことの重要さ、その上でのハイブリッドの在り方、安全・安心・健康・衛生が、今後のMICEのテーマ。世界にどうアピールしていくのかとの言葉で締めくくりました。
参加都市からの開催報告
本イベントでは、開催地ごとのオリジナルプログラムを組むための時間を設けました。プログラム最後の全国総括リレーでは、各地から個性豊かな開催報告がありました。
◆札幌
Withコロナの時代に、力強く前へ。「6 FEET AHEAD - MICEのかたちの新たな価値観」をテーマに、VR動画配信による企業紹介や、オンライン化が進む札幌創出のコンベンションなど、MICEの未来を展望しました。屋外でのネットワーキングでは、フードマイル20+(約30km)に挑戦。札幌市内の多彩な夏野菜、乳製品やワインなど、環境負荷の低減とともに地域の魅力を再発見。独自に感染防止ガイドラインを作成し、JCMAガイドライン該当部分の96%を達成しました。
◆仙台
〜仙台あんしんMICE 伊達政宗公による感染症対策〜
仙台のMICEの拠点「仙台国際センター」が閉館中のため、センターを運営する青葉山コンソーシアム、仙台市、仙台コンベンションビューローから職員研修として約15名が参加しました。エリアシンポジウムの代わりに、ホテルメトロポリタン仙台にご協力いただき作成した伊達武将隊の政宗公と支倉常長による感染症対策の動画を放映しました。職員もエキストラとして参加するなど、チーム一丸となって制作した動画を、皆さんにも楽しんでいただけたと思います。
◆新潟
「新潟でのMICE ポジション」をテーマにディスカッションが開催され、新潟県・各観光コンベンション協会・コンベンション施設・イベント運営会社により様々な議論が展開されました。全国統括リレーでは新潟観光コンベンション協会 赤塚人志氏より「新しいMICE誘致推進事業」として@感染防止対策に係る支援、A開催に係る補助金・助成金の拡充、B参加者による消費活性化策、C各種支援制度の対象要件の説明が、また潟Aド・メディック長沼茂夫氏より、サーマルカメラを用いた感染症対策とソーシャルディスタンスを保つアイテムやスタッフの対策について事例報告が行われました。
◆つくば
安心してつくばらしさと日本文化を楽しめる気さくな少人数のお茶会を提案しました。参加者は典型的な北関東の古民家の玄関で靴を脱ぎ、風通しの良い家屋で食事後、茶事の流れに沿って薄茶を屋外のあずまやで楽しみました。お茶席は、すっきりとしたしつらえで青楓を籠に入れ、スタッフは着物ではなく簡単な作務衣でお迎えしました。最低限の道具、地方色を加えれば留学生、MICE参加の外国人の方向けにも応用できると思います。
◆東京
六本木アカデミーヒルズのタワーホールは、本部機能を持った東京会場として活用されました。通常147名利用の会場は、フィジカルディスタンスを考慮し、28名分の座席を用意し、会場後方は、サクラインターナショナルのご協力による、感染防止を考慮した立食パーティにおけるニュースタイルが提案され、サイタブリア(ケータリング元)による、新しいケータリングのサービスが提案されました。エリアシンポジウムではDMO六本木事務局長坂本和也が、グーグルアースと動画を利用してDMO六本木に参加する多種多様な企業が実施するコロナ対策について紹介し、会員の想いとして安全・安心な街六本木でMICEの開催を待っている旨も動画で紹介されました。これを基に、山本牧子(MPI japan名誉会長)をモデレーターとし、藤村博信(公益財団法人東京観光財団コンベンション事業部次長)、坂本和也にてプランナー、CVB、DMOの立場から「ニューノーマル時代のエリアMICEの取組」と題し議論を行いました。
◆静岡
施設側の尽力により技術的な課題は徐々に解消されていきましたが、運営のコスト(特に人件費)は完全リアルに比べかえって増すことがわかりました。4人の識者には、このエリアが持つ富士・箱根・伊豆を繋ぐハブとしての好立地や豊かな素材群を魅力ある商品として磨き上げ効果的に提案できているか、それを展開していく関係者間のネットワークは十分に構築されているかなどをご議論いただきました。いずれも今後の大きな糧となるものでたいへん有意義な取り組みでした。
◆名古屋
7月22日(水)、名古屋国際会議場で開催された「ウィズ・コロナ時代のMICEを考えるin 名古屋」には、会場とオンラインあわせて330名を超えるMICE関係者が参加しました。MICE開催における感染症対策をテーマとした専門家の講演や、業界関係者による現状報告や対応などが紹介され、春先以降コロナ禍の影響が深刻化する中で、地元MICE関係者相互の連携を確認する場として活発な交流が生まれたことは、あらためてMICEの意義を確認する機会となりました。
◆愛知
Aichi Sky Expoにおいて「ニューノーマルにおけるイベント開催と地域経済」をテーマとするパネルディスカッションを開催(主催:Aichi Sky Expo活性化推進機構)。パネリストは名古屋学院大学の江口忍教授、(株)電通名鉄コミュニケーションズの森内倫子チーフ・プロデューサー、愛知国際会議展示場(株)の大石伸一郎オペレーションマネージャー。
江口教授は、イベントへの集客や大都市への人口・経済の集中など、いわば「密」を鍵とした従来の仕組みの変化や、ニューノーマルにおけるオンライン・ハイブリッドのイベント開催がもつ可能性に言及しました。また、Aichi Sky Expoの最新設備を活用した今後のイベント開催やリニア整備を経た地域経済の展望について議論が交わされました。
◆富山
エリアシンポジウムは、東京からパネリストをオンラインで接続したハイブリット方式、受付は完全無人型のリート受付で実施いたしました。国際会議開催実績のある主催者と共にwithコロナ時代のMICEについて議論。あらたなMICEのカタチとして地域をまたいだサテライト会場によるハイブリット会議の提案をいたしました。地域間移動が閉ざされた時でも、MICEが開催される有効な手段として国内各地域の皆様と考えていきたいと思います。
◆大阪
大阪MICEビジネス・アライアンス会員向けに「大阪からMICEを再始動〜 MICEにおける感染症対策のポイント」と題したセミナーを、7月22日(水)にナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターで開催しました。大阪観光局は、地域経済の活性化に重要なMICEを大阪から再始動するため、「感染症拡大のリスクを抑え、MICEを開催するための主催者向けガイドライン」を発表しました。MICE関係事業者が、このガイドラインを一つの指針として、より安心に開催できる環境づくりの参考にしていただくためのセミナーで、ガイドラインの監修をしていただいた感染症専門の加瀬哲男先生にご講演をいただきました。併せて、感染症対策関連商品、サービス、ソリューションを紹介する出展ブースを設け、参加者は予想を上回る160人にご出席いただき、成功裏に終わりました。
◆堺・大阪
ちんちん電車沿線にぎわい協議会は、大阪市と堺市をつなぐ紀州街道沿いに歴史ある営みを続けてきた多くの地域の人々のにぎわいを取り戻すため発足し、7月5日に決起会をちんちん電車貸切イベントとして実施しました。感染対策を可能な限り適用しつつ、活気ある地域の方々の決意表明も交わされ、幸先の良い事業のスタートとなっただけでなく、ニューノーマルでの全国の貸切観光列車イベントの一つの在り方を示せたのではないかと思います。
◆岡山
岡山では、MICEの積極的な誘致とより安全に開催できる環境づくりの両立を目的として、地元大学や研究者をはじめ、全国のMICE主催者となり得る方々に向けて、MICE開催における新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みを紹介するコンベンション見本市を開催しました。「新しい生活様式」に対応したリアルとオンライン(YouTube配信)のハイブリッド形式で実施し、会場には経済界からも注目され地域の企業経営者にも役に立てる内容となりました。
◆松山
松山の会場運営は、ガイドラインに沿ったソーシャルディスタンスの確保、サーマルカメラを使った体温検知、手指消毒を頻繁にできる環境整備、スタッフの感染防止対策徹底を基本とし、来場者への最大限のおもてなしに挑戦しました。エリアシンポジウムは「withコロナ afterコロナのMICEのカタチ」と題し、当協会の支援やSDGsの取り組みなどについて講演するとともに、企業展示会場も開設。地元企業7社がコロナ対策に関する取り組みや商材についてPRすることで、参加者が最新の機器や情報に触れる機会を創出しました。
◆沖縄
沖縄では、「Where inspiration meets(閃きや創造性と出会える場所)」というMICEブランドを基に、リゾート×ハイブリッドMICEの会場として万国津梁館を選定しました。20数名の県内MICEプレイヤー有志が集い、with コロナにおける各自の取組み状況を共有したほか、これからのMICEの在り方についても意見を交わし、沖縄MICE復活に向けたキックオフとしました。
交流会
イベント終了後は、いくつかの会場をWEBでつないで、感染防止に配慮した交流会が開催されました。東京のメイン会場では個別包装の飲食物、飛沫防止アクリルパネルつき立食テーブル、そして何よりも、数か月ぶりに顔を合わせて語らう機会。対話の際にはマスク着用を原則として、MICE業界の結束を固める、またとない機会となりました。