2017/5/30更新
当研究会は、「国際観光コンベンションフォーラム2017in新潟」(事務局:札幌国際プラザ、コンベンション札幌ネットワーク)を、去る3月9日、10日の両日、新潟県新潟市にある新潟コンベンションセンター 朱鷺メッセで開催しました。 今回は「地域の魅力でMICEを創造!」をテーマに、全国から観光コンベンション関連団体・企業、行政機関などに携わる126名が参加。2日間の日程で特別講演、基調講演、分科会、意見交換会、パネルディスカッション、エクスカーション、MICEサロン・ミーティングを実施しました。
今年で10回目を迎える国際観光コンベンションフォーラムには、全国から126名、うち県外が112名の参加で、日本全国からの研究者や自治体、観光協会、コンベンションビューロー、PCO、イベント会社などMICE関連の企業・施設等に携わる皆様が、MICEと集客交流産業のあり方、そして地域の課題などを議論する場となりました。本年もフォーラム後のオプションプログラムにも高い関心が寄せられ、エクスカーションならびにMICEサロン・ミーティングに57名が意欲的に参加されました。
まず特別講演にて「日本海側最大の「見本市」に成長した『新潟淡麗 にいがた酒の陣』」と題し、同実行委員長で、麒麟山酒造代表取締役社長の齋藤 俊太郎氏にご登壇いただきました。新潟県酒造組合の50周年を記念して2004年にスタートした同展示会は、B to Bの商談会とB to Cの一般者向けイベントから構成されており、新潟内外から非常に注目されている見本市です。今回は運営側の視点から、新潟県の観光物産のひとつでもある「日本酒」のイベントについてお話いただきました。
なお、本フォーラム翌日からの2日間の開催となった本年は、一般参加来場者数13万人と過去最高を記録し盛り上がりを見せていました。
続く基調講演では、野村総合研究所 グループマネージャーの岡村 篤氏より、MICEによる地方創生と、地域資源が生み出す全国各地のMICE事例について講演いただきました。一般観光として使われている地域資源(例:アイスクリーム作り体験)をMICEメニュー化して、チームビルディングに利用している事例や、新潟県長岡市内での、お酒の飲み比べを参加者同士のコミュニケーションの活性化として利用、またおみやげとしても参加者に購入してもらえるという例など、全国で実践されている具体例を交えて、地域の活性化にMICEをどう生かしていくべきかをご紹介いただきました。
続いて、2つの分科会を用意、ラウンド・テーブルミーティングスタイルで行いました。
地方創生では、地域資源を掘り起こし、活用することで、地域の魅力を高めていくことが重要であり、地域自らの取り組みが求められています。第1分科会では観光・MICEにおける地域資源の掘り起こしとその活用方法について考え、地域資源、新潟の火焔土器や日本酒などを事例に、日本商工会議所 地域振興部長の栗原 博氏がコーディネーターを、そしてスピーカーを十日町市博物館 参事・副館長 石原 正敏氏ならびに「にいがた美醸」主宰 村山和恵氏が務められ、活発な意見交換が行われました。
第2分科会第2分科会では、「チャレンジ−中小規模MICEをターゲット」をテーマに、コーディネーターとしてVISIT JAPAN 大使である川島アソシエイツ代表の川島久男氏、スピーカーとして京都府商工労働観光部 副主査の篠原あづ沙氏により、コンベンションを主とした事例紹介が行われ、会期前・中・後と、それぞれの機会を捉えることの大切さなどが挙げられていました。中小規模のMICE発展に注目する地方自治体、MICE関連企業などから多数の参加が見られました。
1日目のプログラム終了後の意見交換会は、朱鷺メッセで華やかに催されました。新潟若手料理人の会から新潟の名物郷土料理、そして新潟、長岡、上越、佐渡の各観光・コンベンション協会からは地酒やおつまみ等を、さらに、長岡市の朝日酒造様からも本フォーラムのために地酒をご提供いただき、それぞれの地酒などに舌鼓を打つ参加者の笑顔あふれる会となりました。今回、寺田吉道新潟県副知事に地元代表の御挨拶をいただき、また支援メニューとして、新潟の名物の1つである新潟古町芸妓(ふるまち げいぎ)の皆様による「米山甚句」「佐渡おけさ」のアトラクション提供がありました。また会場では、来年2月開催地として長崎が紹介され、次回フォーラムへの期待が高まりました。
2日目のパネルディスカッションでは、横浜商科大学商学部教授、宍戸 学氏をコーディネーターにお迎えし、パネリストには日本政府観光局(JNTO)理事 小堀 守氏、THE J TEAM 代表取締役のゲライント ホルト氏、そして今代司酒造 代表取締役会長の葉葺 正幸氏が登壇されました。今回は、「インバウンド・MICEにプラス1(ワン)」と題して、おもてなしの充実や体験プログラムの開発などの「プラス・ワン」、付加価値をつけることが地域への経済効果を高め、イノベーションを惹起させることを踏まえ、これからどう取り組めばいいのか。DMCなど民間企業、行政双方の有識者から、幅広い事例紹介がありました。国内でのユニークべニューの選択肢がまだまだ少ない点等、デスティネーションとしての日本の課題についてや、ニセコや長野、能登の漁村での事例紹介など、参加者は興味深く聞き入っていました。
フォーラム終了後は、MICEの観点から新潟市内を散策するプログラムが催されました。参加者は2日間の日程を振り返り、終始和やかなムードの中会を締めくくりました。
会議終了後のエクスカーションでは、朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター対岸に位置するレストラン、旧第四銀行住吉町支店をリノベーションした「ぽるとカーブドッチ」にて昼食を取りました。こちらはパーティー会場としても使用されています。吹き抜けの銀行として使用されていた当時のままを残す箇所もあり、ユニークベニューとして写真撮影をする参加者が多く見られました。
また、「新潟市歴史博物館みなとぴあ」では、新潟市内の歴史について、市民ボランティアによる詳細な説明を受け、その後はパネルディスカッションでご登壇いただいた、葉葺氏が代表取締役会長を勤められている今代司酒造酒蔵の見学を行いました。日本酒の製造環境は非常にデリケートであり、土足厳禁、メインの酒樽が保管されている蔵の中は、重厚な石蔵の扉の間からのみ見ることが可能でした。また、枠の間から顔を覗かせるとInstagramの投稿画面風になるフォトオポチュニティー(写真撮影可能場所)などもあり、フォーラム参加者らの注目を集めていました。
(写真:同フォトオポチュニティー)MICEサロン・ミーティングは「人材育成を考える」と題し、NPO法人コンベンション札幌ネットワークの松野 淑恵副理事長の進行で、パネルディスカッションに引き続き、横浜商科大学商学部 宍戸 学教授を話題提供としてお迎えし、活発な議論が交わされました。
今回は50名が各4名のグループに分かれ、自己紹介、各地域の人材育成の現状と課題の共有など、活発な意見交換がなされました。
話し合いの中では、「行政の人事異動により、ノウハウの蓄積ができていない」との各地域共通の課題や、組織が地域ごとに異なっている点、行政と民間の役割分担についてなど、現状の課題が複数挙がりました。その後、人材育成の今後の取り組みについて、「教育(人材育成)は民間に任せ、行政は調査やバックアップを行う」という改革案、「若手の育成のため、インターンシップ等、MICEの仕事の魅力とイメージを伝える」、「成功体験をさせる」、データベースでの情報共有、「自分たちの役割を認識し、コンベンションビューローと民間の役割分担をする」、「現場で必要なスキルを考えること」など、前向きかつ今後に生かせる意見が多く聞かれ、参加者からの好評のうちに2日間の日程は終了しました。
当日本コンベンション研究会幹事でもある、JTB総合研究所主席研究員 太田 正隆氏による「地域から発信するMICE〜国際観光コンベンションフォーラム10周年〜」と題した紹介記事が、MICE情報専門月刊誌である、MICEJapan4月号で掲載されました。詳細につきましてはこちらをご覧下さい。