日本コンベンション研究会

 

2016/5/10 更新

国際観光コンベンションフォーラム 2016 in 岡山 開催
全国から164名が参加し、熱い議論を展開

当コンベンション研究会は、「国際観光コンベンションフォーラム2016 in 岡山」(事務局:札幌国際プラザ、コンベンション札幌ネットワーク)を、去る3月17日、18日の両日、岡山市にある岡山コンベンションセンター「ママカリフォーラム」で開催しました。
   今回のテーマは「スポーツ、インバウンドから考える日本MICEの未来」で、全国から観光コンベンション関連団体・企業、行政機関などから164名が参加。特別講演、基調講演、分科会、意見交換会、パネルディスカッション、エクスカーションを実施しました。

 

[1日目]
特別講演
「地域振興のためにスポーツが果たす役割とスポーツ庁の取組」

仙台光仁(スポーツ庁参事官(地域振興担当))

仙台光仁(スポーツ庁参事官(地域振興担当))

特別講演は、スポーツ庁参事官(地域振興担当)の仙台充仁氏より、「地域振興のためにスポーツが果たす役割とスポーツ庁の取組」をテーマに講演いただきました。

特別講演 「地域振興のためにスポーツが果たす役割とスポーツ庁の取組」

まず仙台氏はスポーツ庁創設の経緯として、スポーツ庁がスポーツ基本法の理念を踏まえ、スポーツを通じ「国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む」ことができる社会の実現を目指すと話し、そのためには全ての国民のスポーツ機会の確保・健康長寿社会の実現・スポーツを通じた地域活性化、経済活性化が必要であるとしました。

仙台氏は、スポーツには「感動」、「爽快」、「充実」、時には「悔しさ」など、人を動かす「力」があることを強調し、その「力」を活かして地方を元気にしていきたい、それがスポーツを核とした地域振興に繋がっていくと述べました。いわゆる「体育」と呼ばれているものから「スポーツ」へ発想を転換し、そこから、スポーツ単体から「スポーツ+α」、あるいは「スポーツ×α」へ広げていく。さらにはその先で「スポーツはお金がかかるもの」という認識から「お金を生むもの」にしていくことが目標であると、スポーツ庁が地域振興のために目指す姿を示しました。

加えて観光交流人口増大による経済効果にも言及し、定住人口1人当たりの年間消費額は、旅行者の消費額に換算すると、外国人旅行者9人分=国内旅行者(宿泊)27人分=国内旅行者(日帰り)84人分に匹敵すると述べ、定住人口1人の減少分を交流人口拡大によってカバーできるとの意見を提示しました。

また仙台氏より、スポーツツーリズムや地域のスポーツ大会、大会誘致、合宿・キャンプ誘致と、プロスポーツを核とした活性化や中心市街地活性化など、各地のスポーツによる地域振興事例が多数紹介されました。最後に、地域振興のための実際のスポーツ庁の取り組みとして施設整備支援、後援、スポーツ庁長官表彰・感謝状、他組織機関との連携等の紹介があり、意義深い講演となりました。

基調講演
「観光コンベンションがリードする地方創生-スポーツ・コンベンションが生む3つのエネルギー」

高岡敦史 (岡山大学大学院教育学研究科講師)

高岡敦史 (岡山大学大学院教育学研究科講師)

基調講演「観光コンベンションがリードする地方創生-スポーツ・コンベンションが生む3つのエネルギー

続いての基調講演では、「観光コンベンションがリードする地方創生−スポーツ・コンベンションが生む3つのエネルギー」と題し、岡山大学大学院教育学研究科講師 高岡敦史氏に講演いただきました。

講演で高岡氏は、「スポーツ・コンベンションはどのようにデザインすれば地方創生につなげられるか」「スポーツ・コンベンションにまちや市民にとっての公益的価値はあるか」という問いを掲げ、既存のスポーツ・コンベンションが抱える課題として、交流人口増加と経済波及効果の追求だけでは、スポーツ・コンベンションの公益的価値は論じられないとしました。具体的には、数日から1週間や数年に一度開催されるような瞬発系ビッグスポーツイベントの総合的な効果は小さいことや、持続系スポーツ・コンベンションには工夫が必要なことなどを挙げ、問題提起を行った上でスポーツ・コンベンションの新たな可能性について持論を展開しました。

その中で、スポーツ・コンベンションに期待するべき3つの効果として、次の3つの効果を挙げています。1つ目が、スポーツライフの重層化や市民性を高める地域への愛着と誇りなどを取り上げた、豊かなスポーツライフの実現。2つ目が、スポーツを通した身体的共振をベースとした感動・地域ストーリーの伝播と継承などを取り上げた、スポーツによる共振・感動共有、地域ストーリーの導出。そして3つ目が、協力者・参画者の市民的成長と、ほかの地域活性化の取組みへの転移、地域の開放性の向上などを取り上げた、スポーツ・コンベンションへの当事者的参加。こうした効果を最大に高める方法として、「住民が企画から運営まで参加できる仕掛け」「参加者と地域住民の交流」「まちをリデザインする産官学金労言の組織+地域スポーツコミッション+DMOのネットワーキング」を提案しました。

続いて、2つの分科会を用意、ラウンド・テーブルミーティングスタイルで行いました。

■第1分科会「スポーツ・コンベンション 〜その効果を高める体制とは」

第1分科会「スポーツ・コンベンション 〜その効果を高める体制とは

第1分科会ではスポーツによる地域振興についての具体的な事例を含め、地域の意見交換が行われました。 第1分科会のテーマは、「スポーツ・コンベンション 〜その効果を高める体制とは」。臼井事務所代表の臼井冬彦氏がコーディネーターを、そしてスピーカーを基調講演の高岡敦史氏がつとめられました。

高岡氏から最初に、地元・岡山市で発足した「おかやまスポーツプロモーション研究会」について説明があり、続いて新潟、堺市、札幌、大阪からスポーツ・コンベンション等に関する現状と課題が紹介されました。また、岡山の研究会の事例から「多くのステークホルダーを巻き込み、緩い組織体制で、議論のテーブルを提供する」と、組織や体制のあらたなスタイルを紹介しました。

臼井氏は、スポーツはやりようによっては大きな経済効果をもたらすことに気づいてもらう仕掛け・仕組みづくりが必要になってくること。そういったことを認識する勉強会や研究会のような形式が、1つのドライビング・フォースとなりうるのではないか、と述べ、締めくくられています。

■第2分科会「インバウンド急増対策−民泊はどう進むのか」

第2分科会「インバウンド急増対策−民泊はどう進むのか」

第2分科会「インバウンド急増対策−民泊はどう進むのか」

第2分科会では、「インバウンド急増対策-民泊はどう進むのか」をテーマに、立教大学特任教授の玉井和博氏がコーディネーターをつとめられ、とまれる株式会社代表取締役の三口聡之介氏をスピーカーにお迎えし、広く議論が展開されました。

玉井氏からは、日本の宿泊施設と民泊について、民泊のスタイルとして、ホームステイ型と投資型の2タイプがあることや、東京都大田区が民泊特区の指定を受けたことの紹介がありました。

三口氏は、大田区から認定され「ヤミ民泊」から「合法民泊」としての取り組みを述べました。また本分科会では、近隣とのトラブルや、宿泊客のリスク、投資型民泊の問題点や今後の課題についても活発な意見が交換されました。

さらに今後スマートフォンなどの技術革新が進むに伴い、地域社会においても多様な対応が求められるという意見が出され、民泊の今後の動向に強い関心が示されました。

第2分科会「MICE誘致の潮流」

1日目のプログラム終了後には、意見交換会としてTHE STYLEというパーティー会場にて華やかな会が催されました。会場では、来年開催予定地である新潟の紹介がVTRとともに行われるなど、全体で活発な情報交換が行われるとともに、本フォーラム2日目のプログラムならびに次回フォーラムへの期待が高まりました。

[2日目]パネルディスカッション

2日目は、メインプログラムであるパネルディスカッションの前に、ロビーでのパネル展示紹介と併せて、日本電信電話株式会社の濱村文久氏よりICTの活用事例報告をご紹介いただきました。

ツールド・フランスのオフィシャル・テクニカルスポンサーとしてのICTの活用事例や、新潟県苗場スキー場で開催されたアルペンスキーのワールドカップにおけるスマートフォンアプリの活用事例が動画とともに紹介され、参加者は興味津々の様子で聞き入っていました。

パネルディスカッション

「MICE施設の現状と展望」

「MICE施設の現状と展望」

パネルディスカッションでは、「MICE施設の現状と展望」と題し、新たな大型MICE施設が各地で建設されている一方で、大規模修繕期を迎える既存施設も多くなっているなか、MICEの継続・発展のための施設のあり方について、民間、行政双方の立場から事例紹介と意見交換が行われました。こちらはコーディネーターにJTB総合研究所主席研究員/MICE戦略室長の太田正隆氏をお迎えし、パネリストはパシフィコ横浜 総務部総務課担当課長の佐藤利幸氏、森ビル株式会社 アカデミーヒルズ事業部 業務推進グループ課長の坂本和也氏、そして長崎市経済局文化観光部 観光政策課主幹 MICE担当の牧島昌博氏が登壇されました。

ディスカッションの前に、まず太田氏による日本のMICE施設建設の歴史紹介がありました。MICE施設というものに厳密な定義はないということを踏まえ、先に公の施設とは何かを振り返りました。代表的なものとして、体育・文化・社会福祉施設や、公営の病院、上下水道施設が公の施設として挙げられ、いわゆる箱物系施設とインフラ系施設、社会基盤施設があることを確認しました。その上で、MICE施設は最近の傾向として指定管理事業者が入っているケースが非常に多くなりつつあることなどが紹介されました。

そしてパネリストの皆様からは、現在増築・改修をおこなっているパシフィコ横浜、六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズのような都心のMICE施設、これから建設が予定されている長崎市の計画など、全国的にMICE施設の整備が進められている現状が報告されました。

こうした状況に注目しながら、MICE施設をつくる意味や、地域の特性に合わせて考えていく必要性、さらに箱物としてのMICE施設に対してのソフト面や、まちづくりやまちおこしへの期待度・要求度が高くなっている点にも着目し、これまで以上に地域の総合的取り組みがカギとなるという見方が出されました。

■全体総括

2日間の特別講演、基調講演、分科会、パネルディスカッションを総括して、予定では日本コンベンション研究会会長石森が全体総括を行うこととなっていましたが、所用により出席できないため、代わって第一分科会コーディネーターの臼井氏からご報告・講評をいただき、幅広く活発な議論が行われた2日間を振り返りました。

■エクスカーション

倉敷市内で和菓子作り・ユニークベニュー体験

フォーラム終了後のエクスカーションでは、瓦屋根や白壁が印象的な、倉敷美観地区を散策するプログラムが催されました。参加者は美観地区内にある大原美術館の視察鑑賞と、むらすずめと呼ばれる地元のお菓子作りを体験しました。2つの体験後には、新渓園にて、「インバウンドとMICE」と題し、MICEサロン・ミーティングを行いました。会場に選ばれた新渓園は、明治に倉敷紡績の初代社長大原氏の別荘として建設されたものです。その非日常的な広々とした畳敷きの空間の中で、各グループに分かれ、座布団を寄せ合いインバウンドとMICEの各都市の事例について積極的、活発な意見交換がなされました。続いて交流会会場である、あぶと倉敷館天領に場所を移しました。歴史を感じる景観の中で、新鮮な海の幸に舌鼓を打ち、参加者同士2日間の日程を振り返り、終始和やかなムードの中で会を締めくくりました。

今回で9回目を迎える国際観光コンベンションフォーラムは、公益社団法人おかやま観光コンベンション協会の協力を得て、地元岡山からの参加者が半数を占め、過去最大規模のフォーラム開催となりました。またフォーラム後もエクスカーションへの意欲的な参加が見られました。本フォーラムの開催地である岡山市・倉敷市でのMICE・観光資源は参加者の目に眩しく映ったことでしょう。有識者・実践者の声や幅広い事例を聞く機会となったと参加者からの好評を得て、成功裏に終了しました。

エクスカーション エクスカーション
エクスカーション エクスカーション
エクスカーション エクスカーション

次回は、来年3月に新潟市で開催する予定です。

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