2014/3/12 更新
当コンベンション研究会は、「国際観光コンベンションフォーラム2014 in 札幌」(事務局:札幌国際プラザ、コンベンション札幌ネットワーク)を、去る2月4日、5日の両日、ロイトン札幌で開催しました。
今回のテーマは「MICE再創造へ 新たな一歩!」で、全国から観光コンベンション関連団体・企業、行政機関などから140人が参加。基調講演、分科会、意見交換会、パネルディスカッション、エクスカーションを実施しました。
基調講演は、ランドスケープ・アーキテクトとして世界的に活躍している高野文彰氏。自身が参加している国際会議の話や、ディレクターを務めた北海道清水町の「千年の森」で2012年に開催した北海道ガーデンショーの紹介を通じて、地域で開催する創造的MICEのヒントが語られました。
なかでも氏は、MICEの特徴として、1)ビジネス・イノベーションの機会の創造、2)地域の経済波及効果、3)国・都市の競争力の向上の3つをあげ、これまで参加してきた会議の開催地を、ランドスケープ・アーキテクトの視点で撮影した写真で紹介。開催地選びには、歴史や文化、国の情勢や社会情勢といった背景と、会議の内容との関係性がポイントであることを指摘しました。
また、4カ月間にわたって開催した北海道ガーデンショーについても、自然との対話と北海道のおおらかさを生かしたことと、地域の人たちの参加する場をつくった企画が、来場者20万人という記録とガーデンショーの成功をもたらしたと振り返り、2015年の第2回北海道ガーデンショー開催に向けて、今年プレイベントを計画している点にも触れました。
ガーデンを切り口に北海道の新たな魅力創出と、地域間ネットワークの形成で生まれた「創出型MICE」の事例として学ぶことが多い講演となりました。
第1分科会のテーマは、「景観創造−シーニックバイウェイ北海道の挑戦」。景観や自然環境に配慮し、地域の魅力を道でつなぎながら個性的な地域、美しい環境づくりを目指して始まった「シーニックバイウェイ北海道」の取り組みは、着実な成果を上げてきました。その挑戦の歩みを国土交通省北海道開発局建設部の和泉晶裕道路課長をスピーカーに迎えて振り返りながら、札幌国際大学教授の市岡浩子氏をコーディネーターにラウンドテーブルミーティングスタイルで、地域の魅力づくりについて語り合いました。
地域の活動団体の力による道を媒介とした魅力づくり
国の政策として全国に先駆けて2005年にスタートした「シーニックバイウェイ北海道」は、地域の活動団体と行政が協力しながら点から線へとルート(道路)でつなぎ、地域づくりを展開しています。現在全道に11の指定ルートと3つの候補ルートがあり、全部で約400の活動団体がそれぞれの地域で活動しています。国の施策として始まった取り組みと歩みを和泉氏から説明の後、各ルートの担当スタッフから、地域の活動団体の具体的な取り組み事例も紹介され、地域の特性を生かした魅力づくりを地域の人々がネットワークをつくり活動している様子が語られました。
参加者からは「風景と道が観光資源になるのが北海道らしい」といった感想も聞かれ、シーニックバイウェイ北海道の活動と、道が観光ビジネスとなっている点が注目されました。
第2分科会のテーマは、「地域MICEを創造−DMOとDMCを考える」。沖縄でDMCの会社を2006年に立ち上げた株式会社DMC沖縄の徳田博之社長をスピーカーに迎え、北海道大学の特任准教授・難波美帆氏をコーディネーターに、ワークショップ形式で、参加者48人を6人ずつ8つのテーブルに分け、それぞれDMC、DMOの役割や今後の展開を語り合いました。
人材育成と自主財源の確保が必要
徳田氏はパシフィコ横浜での勤務でDMOを実践して、沖縄でDMCとしてプログラムの開発や人材育成にも取り組んでいる現状を紹介。続いて各テーブルで過去・現在から課題を抽出し、解決に向けての対話が行われました。
最後の発表では、官主導型からの脱却、人材のスキルアップ、地域の特性を生かしたコンテンツづくり、自主財源の確保、コーディネーターの育成、MICEをビジネスとして成立させるためにMICEのどこのマーケットを狙うか、民間と一緒にプロモーションを行う環境の整備など、があげられました。
わずか1時間のテーブル対話では、行政関係者と民間側の事情の違いはあるものの官民一体となったMICE戦略や自主財源の確保など、同じような課題を抱えており、今後それぞれの地域に合ったDMOとDMCの役割を考えていく必要が示唆されました。
2020年の東京オリンピック開催に向け、環境配慮を推進したMICEについて、北海道大学特任教授の臼井冬彦氏をコーディネーターに、東京都市大学教授の伊坪徳宏氏、株式会社グリーンアップル代表取締役の中島悠氏、日本コンベンションサービス株式会社の星野昌也氏をスピーカーに、パネルディスカッションが繰り広げられました。
CO2の見える化で、環境配慮型MICEへ
伊坪氏は、東京マラソンのCO2排出量や毎年12月に東京で開催されるエコプロダクツ展のCO2排出量などの測定を通じて、毎年測定し、情報提供することで、削減に向けての努力が主催者、出展者、参加者で行われていることを指摘するとともに、ライフサイクルアセスメント(LCA)の視点からも環境配慮について考えることも大切だと語りました。また、中島氏は東京代々木公園で毎年開かれているアースデイでの取り組みを紹介したほか、星野氏は、MICEの運営にあたり、サスティナビリティという考え方をもとにした自社独自の取り組みを紹介した後、MICEでの環境配慮の必要性を広く理解してもらうことの重要性にも言及し、CO2排出量の見える化なども大切だと語りました。
2日間の基調講演、分科会、パネルディスカッションを総括して、当研究会の石森秀三会長が挨拶に立ち、基調講演の地域の総合的価値をつけることの大切さ、第1分科会「景観を創造−シーニックバイウェイ北海道の挑戦」の地域の取り組み、第2分科会の「地域MICEを創造−DMCとDMOを考える」で出された課題のプロフェッショナルの育成、パネルディスカッションの環境配慮型のMICEといった、多岐にわたる活発な議論が行われた2日間を振り返りました。
小樽でユニークベニュー体験
今回のエクスカーションは小樽へ。造り酒屋の田中酒造が所有する小樽の歴史的建造物「亀甲蔵」を見学した後、同じく歴史的建造物」である同社本店の和室に車座となってMICEサロン・ミーティングを開催しました。テーマは「ユニークベニューをどう活かすか」。一般社団法人くにびきメッセの原利一事務局長をモデレーターに、全国的に話題となっているユニークベニューの発掘とその活用について、それぞれの都市の実情や抱えている課題について意見交換しました。
MICEサロン・ミーティング終了後は、「ふるさとイベント大賞総務大臣表彰」など、高い評価を受けている「小樽雪あかりの路」を体感しようと、2月7日からの同イベント開催を前に、特別に雪あかりの路レクチャー&作業体験を実施。同実行委員会の簔谷和臣さんを講師に、韓国を中心とした海外からのボランティア活動の参加など、このイベントの特徴やコンセプトを学ぶとともに、この冬一番の厳しい寒さの中でスノーキャンドルづくりを体験。参加者は、夕暮れの中、完成したキャンドルの灯りにしばし見入っていました。
その夜には、旧金澤友次郎(伍楽園)邸の内部部材を移築して店舗に改装した、おたる・蕎麦屋・藪半で交流会を行いました。観光カリスマでもある店主小川原格さんも加わって、まちづくりの話などで大いに盛り上がり、交流を深めて2日間のプログラムの幕を閉じました。
次回は、来年2月に金沢市で開催する予定です。